vMix ハンズオン【第7回】「Input Settings の全容について」

前回は → vMix ハンズオン【第6回】

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1. Input 共通の基本設定について

前回に引き続き Input について網羅していきたいと思います。

これまで何となく触ってきましたが、Input に備わる共通設定について改めて説明します。

Input Settings はプリセットの Input の下に表示された「⚙」をクリックするか、 Preview ないし、Output のタイトルバーにある「⚙」をクリックする事で開きます。

Input Settings は以下の様なページに分かれています。

ページ内容
GeneralInput そのものの名前や、フォーマット、動作設定を行います。
Colour Adjust色の調整を行います。
Colour Keyクロマキーや、Luma キーを設定します。
Colour CorrectionColour Adjust よりも更に高度な色の補正を行います。
Position絵の拡大縮小、パン、回転、クロッピングを行います。Multi View のレイヤー毎に設定できます。
Multi Viewマルチビューの設定を行います。
Triggersイベント発生に応じて自動実行されるトリガーの設定を行います。
Tally Lightsタリー機器の設定を行います。
PTZPTZ(パン・チルト・ズーム)カメラをコントロールします。
AdvancedVideo や Camera の場合は、映像のディレイやDirect Show Filter の設定を行います。

Genral の一部を除いて、基本的にはほとんどが「映像」に関する設定で、 Audio に関する設定の大部分は、別の設定画面である「Audio Settings」にまとめられています(第3回を参照の事)

ここでは、執筆時点の最新版 23.0.0.68 を用いて説明しますので、時間が経って変わっている可能性があります。

2. General

誰もが頻繁に触るであろう Input に関するごくごく基本的な設定がまとめられています。

番号設定項目機能
1Nameプリセットに表示される Input の名前を設定します。
2Aspect Ratioアスペクト比の設定で Normal が 4:3、Widescreen が 16:9、Automatic が自動認識、Source がソースを維持です。
3Categoryプリセットに表示される Input のカテゴリー設定で、黒・赤・緑・黄・紫・水色・青の 7 色から選びます。ただし、黒は「カテゴリー設定無し」です。尚、具体的な使い方は第2回 でも説明しています。

4Deinterlace Blendインタレースの奇数フレームと偶数フレームをブレンドする設定(ソースがインタレースの場合のみ)。副作用として縦解像度とフレームレートが半分に低下したように見えます。動きがある映像では残像も視認されます。
5Sharpenぼやけた映像をくっきりさせるシャープ化処理を有効にします。エッジがはっきりする代わりにざらついたノイズが目立つようになります。更に、処理の分プロセッサー資源を消費します。
6Mirror映像を左右反転させます。
7Automatically mix audioInput が Output に送られた場合、Audio を自動で ON(ミュート解除)/OFF(ミュート) します。
8Automatically Play with TransitionInput が Output に送られた場合、自動で再生を開始する。
9Automatically Restart with TransitionInput が Output に送られた場合、自動で再生位置を先頭に戻す。
10Automatically Pause after TransitionInput が Output から下げられた場合、自動で一時停止する。
11Mouse Click Actionプリセットで、Input を左クリックした際の動作を設定する。「Preview」へ出すがデフォルト。トランジションなしでOutputに出す「Cut」, FadeでOutputに出す「Quick Play」, オーバーレイに出す「Overlay1~Overlay4」, トランジションを使用してOutputへ出す「Transition1~Transition4」, 何もしない「Nothing」が選べます。
12Source Aspect Ratio, Resolution, Frame Rate, Deinterlacingソースのフォーマット情報が表示されます。
13Audio SettingsAudio専用の設定画面を開きます。(詳細は第3回を参照のこと
14Create Virtual Input該当Input の Virtual Input を作成します。(詳細は第2回を参照のこと
20ChangeInput のソースを変更します。

以下は、General だけではなく、全てのメニューで共通の項目です。

番号設定項目機能
15PreviewInput のプレビューが表示されます。 16~18 によって表示を調整可能です。
16Safe Areaプレビューにセーフエリアを表示します。このセーフエリアの中に配置した映像要素は、映像以外の要素によって隠されないという安全領域です。例えばTVのオーバースキャンによって画面をはみ出し、ベゼルに映像の一部が隠されてしまうなどがあります。PC で視聴する場合は基本的に端から端まで映し出されるので問題ないと思われますが、シークバーやその他のオーバーレイで隠される場合もありますので、セーフエリアを意識した絵作りをするのが好ましいです。

17Weveform Monitorプレビューに映像信号の波形を表示します。波形を確認することで、カラーバランスを数値的に確認することが出来ます。

18ズームフェーダープレビューを拡大表示できます。不幸にしてプレビューはスクロールが出来ないので、ズームは映像中心をセンターにしたものになります。
19Copy From...別の Input から Input Settings の内容をコピーします。下図の様に Input の一部分をコピー可能です。

3. Colour Adjust

番号設定項目機能
1Red, Blue, GreenRBG 各色のレベルを調整する。
2Saturation彩度を調整する。
3Auto White Balanceクリックすると現在の絵に対してホワイトバランスを自動調整する。スポイトで「白」となる部分を指定する。(例えば照明をつけた状態で白い紙を持ってカメラ前に立ってもらう等)
4ResetColour Adjust の設定をリセットする
5Black Stretch0 より高い値で来ている「黒」を 0 にする様、RGB 範囲を引き延ばす(ストレッチする)。正しい色範囲になる代わりに、色解像度が荒くなり、グラデーションは段差が目立つようになる。また、やりすぎると黒飛びするので注意。
6White Stretch255 より低い値で来ている「白」を 255 にする様、RGB 範囲を引き延ばす(ストレッチする)。正しい色範囲になる代わりに、色解像度が荒くなり、グラデーションは段差が目立つようになる。やりすぎると白飛びするので注意。
7Auto現在表示されている絵に対して RGB レベルを自動調節する。
80-255, 16-235Black/White Stretch に設定する RBG 範囲のプリセット。0-255 がいわゆる「フルレンジ」 16-235 が「限定(リミテッド)レンジ」に該当
9Alphaアルファ値を指定。255が100%で、ソースのアルファ値に乗算されます。
10Premultiplied Alphaソースのアルファ値が、事前にピクセル値に乗算されている場合にチェックする。静止画像などで処理負荷軽減のため、前処理としてアルファ値を各ピクセルに乗算する場合があるため。普通に読み込んだ時に想定よりも暗い場合は Premultiplied Alpha の可能性が高い。
11Rec. 601 to 709カラープロファイルを Rec.601 から Rec.709 に変換する。詳しくはないのですが、Rec.601 はビデオがまだアナログ中心だったころの古い規格で、対して 709 は HDTV 用です。古いメディアを使用す場合使用するものと思います。

4. Colour Key

番号設定項目機能
1Colour Key透過させたい色を指定します。パレットから選ぶ他、スポイトで現在表示されている絵から色を採ることが可能です。
2Chroma Keyドキュメントにも詳細な説明がないので具体的効果は不明ですが、基本的に、右一杯にしておく物の様です。どうしても背景が上手く抜けない場合は左に動かして調整する、と言った使い方になると思います。こちらより Chroma Key Filter や Red,Green,Blue の調整を優先させるとよいでしょう。
3Chroma Key Filterクロマキーによくある、不透明領域の輪郭に出る緑(あるいは青)の「ハロ」を取り除きます。かけすぎると、不透明領域に透過領域が侵食します。
4Red, Green, BlueRGB それぞれの成分でどれだけの幅を許容するかの設定。左が許容ゼロで右に行くほど許容幅が大きくなります。
5Anti Aliasingチェックを入れるとアンチエイリアシング処理が有効になります。強度は Low,Medium,High の3段階で、強くするとその分エッジがなめらかになり、代償としてシャープさが失われます。
6Auto Chroma Key PresetsChroma Key, Chroma Key Filter, Red, Green, Blue の設定が3つプリセットされています。 1 がスタジオセッティングが理想的な場合、2 が中の上くらい、3 が悪い場合、と言ったプリセット内容です。グリーンバック・ブルーバックそれぞれに対応して自動設定されます。プリセットを選んだ後に、各スライダーの調整も可能です。
7ResetChroma Key の設定をリセットします。
8Luma KeyColour Key とは別に使用できる背景透過技法で、明るさに応じて背景を透過させます。従って「黒」は完全な透明になります。スライダーで閾値を設定できます。透過処理は完全なON/OFFではなく閾値辺りでグラデーションするように処理されます。スライダーを右に動かすほどグラデーションの範囲が広くなります。
9Key/Fill Inputグレイスケールの外部映像(キーInput)で、透過させる領域を指定することが出来ます。PhotoShop のマスクの様な感じです。キー Input には任意の Input(Video でもなんでも)を選択できます。例としては、円形のマスク画像を作れば、カメラ映像を丸くクロッピングすることもできます。

5. Colour Correction

番号設定項目機能
1ON/OFFColour Correction の有効・無効を設定。なるたけ GPU 資源を節約したければ OFF にしましょう。
2Displayコントローラーを Colour Wheels と Color Bars の2種類から選べます。クリックするたびに切り替わります。機能的にはどちらも同じですので使いやすい方を選んでください。映像編集ソフトをよく扱う人は前者が馴染み深いかもしれません。

3PresetColour Correction の設定のプリセット読み書き。
4Lift色のダイナミックレンジの底辺(最暗部)をどれだけ持ち上げるかという設定です。RGB それぞれ値を持ちます。Colour Wheels ではこれを視覚的・直感的に操作できます。オフセットではないので、持ち上げた分だけダイナミックレンジが圧縮されます。
5Gamma色のダイナミックレンジ内での特性をガンマ曲線で設定します。値がプラス方向に高い程、特性がより明るい方に偏るようなガンマ曲線になります。逆に、マイナス方向に低い場合は暗い方に偏るようなガンマ曲線になります。
6Gain色のダイナミックレンジにどれだけの利得(Gain)を与えるかの設定です。要するに RGB 各値に乗算をするということです。1より小さければダイナミックレンジを圧縮し、1より大きければ伸張します。 Lift で圧縮された分を Gain で伸張すればオフセットしたことになります。
7縦フェーダーRGB を横並びで一度に操作します。
8ResetLift, gamma, Gain それぞれの値をリセット(0, 0, 0 に)します。
9Hue色相を調整します。Reset ボタンがフェーダーの右についています。
10Sat彩度を調整します。Reset ボタンがフェーダーの右についています。
11Basic Auto Correct現在表示されている絵に対して、Lift と Gain を自動調整します。

説明読んでもなんやよう分らんわ、という方はカラーバーを出して、Waveform Monitor に「Parade RGB + Preview」を選択すると、 とても分かりやすいグラフが表示されます。 Color Wheels または Color Bars を操作してみて、グラフがどのように変化するか観察してみましょう。

Waveform Monitor を見ながら RGB 各チャンネルの分布が概ね均等になるように調節すると、適正なホワイトバランスとなります。

6. Position

番号設定項目機能
1レイヤー選択プルダウン位置合わせ・クロッピングをする対象のレイヤーを選択します。
2Zoom, Zoom X, Zoom Y拡大縮小を行います。それぞれ XY 軸同時、X 軸個別、Y 軸個別 の調整が出来ます。
3Pan X, Pan Yパン(平行移動)を行います。尚、移動は下のプレビューエリアでマウスドラッグすることでも行えます。
4Rotate3次元空間の X, Y, Z 軸それぞれについて回転します。角度はラジアンを実数で指定します(何故?)。つまり1回転させると 2 * PI = 約6.28 になります。
5Crop X1, Y1クリッピング(切り取り)範囲の左上座標を指定します。
6Crop X2, Y2クロッピング(切り取り)範囲の右下座標を指定します。
7Reset各フェーダーに付属する Reset ボタンでフェーダーをデフォルト位置に戻します。
8Reset All全ての Position 設定をリセットします。

7. Multi View

番号設定項目機能
1レイヤー番号番号が大きくなるほど、上のレイヤーになります(PhotoShop 等と逆です)
2チェックボックスレイヤーの表示・非表示をチェックボックスで設定します。
3Input 選択プルダウンレイヤーに表示させる Input を選択します。
4PositionPosition 設定画面を該当レイヤーが選択された状態で開くショートカットボタンです。
5プリセットレイヤーの位置関係をプリセットすることが出来ます。選択で即反映。Add で現在の設定をプリセットに追加。選択して Remove で削除です。

8. Triggers

詳細は、「第5回 Triggerとオートメーションについて」を参照してください。

9. Tally Lights

各種タリー機器に接続する設定です。

タリーとは、現在オンエアになっているカメラをランプ点灯で出演者に知らせる機器の事です。 複数のカメラで撮影されている場合、出演者はタリーを見てカメラ目線を送るわけです。

Arduino(マイコンボード)で作成された自作タリーライトシステムに接続することもできるのが面白いですね。

いずれにしても、本格的なスタジオユースに対応するための機能です。 いずれ機会があれば説明したいと思います。

10. PTZ

PTZ カメラを制御できる設定画面です。

PTZ とは、パン・チルト・ズームの略で、遠隔でカメラの方向や画角を操作できるアクチュエーター内蔵のカメラの事です。 カメラマンが立てないような場所(例えば高所)に設置されたカメラには搭載されていることが多いです。 最新の PTZ カメラはネットに接続されていることが多いので、IPアドレスを指定して接続を行います。

残念ながら筆者は対応する機器を持ち合わせていないのですが、こちらも機会があれば説明したいと思います。

11. Advanced

Input が Camera の場合に限り、映像にディレイを挿入することが出来ます (*)。 ディレイは、その時間分のバッファーメモリを必要とするので、Apply ボタンの脇に表示される必要容量に注意してください。

遅延させる時間はフレーム数で指定します。この場合の「フレーム」はプリセットのそれではなく、Input ソースのフレーム数です。 例えば、60fps でキャプチャー中のソースの場合、2 秒遅延させるには 120 と入力します。

参考までに、フルHD なら 1 フレーム 8 MB のメモリーを消費します。

更に、Direct Show Filter(Microsoft のマルチメディアフレームワーク) の設定が出来ます。 Webcam 等のキャプチャーデバイスと vMix とは、直接接続される訳ではなく、間にソフトウェア的なフィルターをいくつも介して行われます。 それらは、信号の同期を取ったり、分岐あるいは合流、フォーマットを変更したり、カラープロファイルを変更したり・・・と言った工程に分かれます。 この工程はリストボックスに一覧として表示されるのですが、 それらはまさに「Filter」と呼ばれ、それぞれにプロパティ(設定)を持つ事があります(持たない事もあります)

基本的にそれらのプロパティは「最適に動作するよう」自動設定されるのですが、 Advance では(それが可能であれば)を手動で変更することが出来ます。

言うまでもなく、普通、自動に任せておけば万事問題ないはずのものを弄るので、動作がおかしくなったり最悪クラッシュしたりする場合があります。 Direct Show に関する知識がない場合は触らないほうが良いと思います。


(*) 音声は遅延されません!

12. 今回はここまで

という事で、第6回と第7回の2回に分けて、リファレンス的に Input の全容を説明しました。 これで、今後は Input に関しては知っている前提で説明することが出来ます。良かった良かった。

次回は Overlay と、可能なら Transition、特に Stinger Transition の作り方について説明したいと思います。

それではまた!

次回は → vMix ハンズオン【第8回】