vMix ハンズオン【第3回】「Audioについて」

前回は → vMix ハンズオン【第2回】

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0. 新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。有限会社オープンスフィアの花山です。 本年もよろしくお願いします。

さて、日本語でvMixの使い方をまとめた「vMixハンズオン」の第3回をようやく公開します。 12月中にこの1本をアップしようと考えていたのですが、色々あって更新できず年を跨いでしまいました。


※本ハンズオンでは vMix の 4K エディションを前提にして説明します。各エディションの機能表は こちら

1. 音声は一筋縄ではいかない

前回最後で告知した通り、今回はまずvMixでの音声の取り扱いについて書きたいと思います。内容が多くなったのでショートカットについては次回以降に順延します。 (追記:第4回 でショートカットについて説明しています)

いきなり「音声は一筋縄ではいかない」と書きましたが(もしかしたら筆者の周りだけかもしれませんが)、現場を見ていると配信と音声の関係は、映像よりもある種の難しさがあると思います。 配信音声のクオリティが悪い、しかし原因は不明、調整に時間がとられる、という状況も多いように思います。 たぶん配信の場合、パソコンという複雑な機材が介在しているからでしょう・・・。

vMix なんかでAudioをミックスするなんてとんでもない!と本職の方は言われるかもしれませんが、小規模、低コスト、低事故率、自動化という条件だと、 これを克服することで光明が見える気もします。イノベーションは「ありえない」を乗り越えた先にある気がします。

2. vMixの音声システム

第2回で述べた通り、vMix のAudioは映像に「セットされている」という考え方になり、Audioのみのインプットというのは存在しません。 動画でもビデオキャプチャーでも「真っ黒」でもいいですが、何らかの映像にセットされて扱われます。 また、AudioがセットされたソースがvMix上に読み込まれると、Audio Mixer のINPUTSエリアにAudioのフェーダーが追加されます。 これはソース一つにつき1本割り当てられ(*1)、個別に音量調節が可能です。 OUTPUTSには、現在扱える出力先(Output)が並びます。

では何か、Audioが含まれるVideoをInputとして追加してみてください(追加の仕方は前回、前々回を参照の事)。 追加したVideoにAudioが含まれるので、INPUTSエリアに対応するフェーダーが立ち上がりました。 このフェーダーの各部を見ていきましょう。

音量をコントロールするdBスケールのボリュームフェーダーと、その上にパンポットの水平フェーダーが置かれています。 ボリュームフェーダーの左下についた「M」ボタンでは、「Master」への送りをON/OFFします(ミュートじゃないよ)

また、後述するAudio Outputs設定でBus Outputを追加した場合、「A」「B」といったボタンで、各Bus Outputへの送りをON/OFFすることが出来ます。 「🔊」アイコンを押すと「ミュート」を切り替え出来ます。「S」アイコンは「ソロ」を切り替えできます。 この辺りは一般的なオーディオミキサーと同じ仕組みになっている、と言えます。

「S」「M」の間にある「⇆」が、自動的にAudioをON/OFFする機能の有効・無効を切り替えるアイコンです。 「⚙」アイコンでAudio Settingsダイアログを呼び出せます。こちらは後ほど説明します。

OUTPUTSエリアに目を移すと、「Master」と(スクリーンショット上では)「A」と「B」のBus Outputが表示されています。 「Master」は通常、配信に送出されるAudioだと考えてOKです。Bus Outputは、付加的な出力先です(例えば「MC返し」等に使う) Bus Outputは最大7つまで増設することが出来ます(*2)。

各フェーダーに、「⚙」「S」「🔊」「M」のアイコンが並んでいると思いますが、これは先程説明したものと同様です。 ただし「M」はBus Outputでミックスされたものを更にMasterに送ります。 「i」はアウトプットの統計情報を見ることが出来ます。 何かおかしいな?と思ったら、こちらを開いてみると、何かしらエラーが表示されているかもしれません。

最後に、Masterにある「🎧」アイコンについて説明します。

vMixはMasterとは別に「ヘッドホン出力」が用意されています。 フェーダーとしてはOUTPUTSに表示されないのですが、Masterフェーダーと、各ソースのAudio Settingsダイアログに、ボリュームノブが表示されます。

このボリュームノブによって、ヘッドホン出力に送るAudioを制御できます。注意としては、あくまでも「Master」のプリフェーダーで「音を聞くための機能」なので、 Masterに送っていない音は聞くことはできません。「Masterに出さずに音をモニターしたい」(*3) といった場合はBus Outputを使いましょう。 Masterフェーダーに付いているボリュームノブで全体、各ソースのAudio Settingsでそれぞれのソースのボリュームを調整できます。


(*1) 設定で表示しないようにもできます。

(*2) スペースの都合で、フェーダーには「M」の他2つのBus出力しか表示されませんが、右クリックメニューで3つ目以降がON/OFFできるようになっています。

(*3) 例えば、本番中、新たにつないだマイクや、動画の音、ゲーム画面の音が正常に入っているかな?といったのを確認したい場合が該当するかと思います。

Audioデバイスを、Outputに割り当てる

ここで、PCに接続されたAudioデバイスを、Outputに割り当てしましょう。 vMix の画面右上にある「Settings」を押して、「Audio Outputs」を選択してください。

Master、Headphonesの他7つのBus出力が表示されますので、それぞれで割り当てたいAudioデバイスをプルダウンから選択してください。 Audioデバイスを割り当てない(そのOutputを使用しない)場合は、「None」を選択すれば、無効にすることが出来ます。

ここで、「Enabled」という見慣れないAudioデバイスが表示されていることに気づくでしょう。「Enabled」は、Audioデバイスは割り当てないが、 「出力先としては有効にしたい」といった場合に使用するダミーデバイスです。一見無意味な様に感じますが、 vMixの豊富なアウトプットを活用するために重要な機能の一つですので、覚えておきましょう。

各Outputの右にある「1+2」と表示されたプルダウンは、Audioデバイスが3チャンネル以上のサラウンドに対応している場合に使用するものです。 配信ではあまり使わないと思いますが、ご使用のシステムが5.1chサラウンド等に対応している場合は、複数のOutput(Busも含めて最大3つ)を駆使することで、 サラウンド出力が可能となります。・・・とは言え、説明しといてなんですが、使う事はほぼないと思いますので、常に 1+2 にしておけばOKです。 筆者も使ったことないんでオンラインマニュアルからの引用ですが、

  • 1+2 Front L-R
  • 3+4 Center-Subwoofer
  • 5+6 Rear L-R

とのことです。

最後に「Default Bus for New Inputs」でどのOutputに標準で送るか、を選択してください。 大抵は「Master」で問題ないと思いますが、不慮の事故を防ぐために、「モニター用のBus」として決めたBus出力にするのもよいでしょう(*)

尚、「OK」を押して設定を反映すると、vMixの再起動を求められるので、注意してください。 つまり、本番中にいじるのはやめといたほうがいいでしょう。


(*) 逆に、Masterに送り忘れて「音が出ない」という事故が起こる可能性があるので、どっちもどっちですね。人間の方が賢くなるしかないでしょう。

Audioはどのように再生されるのか

前回の後半で説明しましたが、改めて説明すると、AudioはそれがセットされたInputがOutputに送られると、自動的に再生されます(正確にはミュート解除かつ再生) また、Outputから取り下げられると停止します(ミュートかつ一時停止)

これがデフォルトの動作となります。 この動作をキャンセルしたい場合は、Inputの「⚙」→「General」→「Automatically Mix Audio」のチェックを外すことで出来ます (*)。 【1/07訂正】「Automatically Play with Transition」と「Automatically Pause after Transition」も外す必要があります。

その場合は、明示的にInputの「Audio」、またはAudio Mixerで「🔊」を押さない限りミュート解除されず、 更に、Video(フッテージ等)やAudio(BGM等)は「▶」を押さなければ再生が始まりません。

Videoが他のInput BのMulti Viewに設定されていた場合はどうでしょうか。この場合もご想像の通り、Input BがOutputに送られると再生され、 取り下げられると停止します。そのInput Bが他のInput CのMulti Viewに設定されていた場合でも、同様にInput CがOutputに送られるとVideoが再生されます。 このように、「Automatically Mix Audio」が有効の場合は、関わりのあるInputがOutputにあれば勝手に再生されると思ってOKです。

「Automatically Mix Audio」を使わずに、自動再生する方法は他にもあり、Input の Trigger を使用する方法が挙げられますが、それはまた別の回で説明したいと思います。 (追記:第5回 でやり方を説明しています)


(*) または、Audio Mixer の「⇆」アイコンでも切り替え可能。

3. InputのAudio設定

次に、Input毎のAudio設定について説明します。 先程追加した、Video Input から「⚙」→「Audio Settings」を押すか、Audio Mixer上のINPUTSにある、該当フェーダーの「⚙」を押すと、 Audio Settingsダイアログが開きます。

Audio Settings では、多くはありませんがAudioに関する基本的な設定が行えます。 詳細な説明は、エフェクターやマスタリング等のハウ・トゥー本やWEBをググってもらうとして、ここでは簡単な解説をします。

General

Audioの音量と、遅延を設定できます。
「Device Volume」はAudio Inputでのみ表示され、Audioデバイスのボリュームを操作できます。
「Gain」では増幅のみ可能です(減衰したい場合はAudio Mixerのフェーダーを操作してください)。
「Delay」はミリ秒単位で、最大20秒まで遅延を入れることが出来ます。また、最大1秒のマイナス・ディレイ、即ちAudioを先行させる事も出来ます。
「Channel」では、ステレオで入力されているInputの場合に、「ステレオ(All)」として扱うか「モノラル2チャンネル(SeparateMono)」として扱うかを設定できます。 「SeparateMono」とした場合は、各チャンネル毎にGainフェーダーが表示されます。

Automatic Gain Control

「Automatic Gain Control(以下AGC)」は、音量が安定してないソースをある程度一定レベルになる様、リアルタイムに自動調節してくれます。 使い方の例としては、「銃器が登場するFPSゲームで臨場感を出すため銃声や環境音はきちんと聞かせたいが、MCの声には被せたくない」と言った場合に使う事で、 MCが喋っていない時は、控えめに乗せていたゲーム音を持ち上げてくれます。

とは言え、AGCを使うとソース側の音量設定が無駄になり、演出意図が反映されない(*) 場合がありますので、使うのは本当に最終手段といったところです。 実はこのAGCの性能はあまり良くなく、(追従性の問題で)MCの声質も若干おかしくなるので、単にMCの声量バランスを整える場合は、 後述する Compressor を使った方が良い結果が得られるでしょう。


(*) 例えば、トーク中にうっすらとBGMを敷いている場合、MCが喋っている時とそうでない時で、BGMの音量が変わってしまいます。 視聴者にとってこれが鬱陶しく感じられることもあるでしょう。

Delay

このデジタル時代にあっても映像とAudioの同期は悩みの種。というよりむしろ、デジタルだからこそ遅延は切っても切れない問題ともいえます。 なぜならば、映像とAudioを全く別のデバイスから取り込んだ場合は言うに及ばず、HDMIエンベデッドでAudioを取り込んだ場合であっても、 ソフトウェア内部のバッファの取り方によって遅延は発生します。

カメラの前でマイクに向かって手を叩いたり、YouTubeに上がっているAudio Video Sync Test 等を使って、 Input の映像とAudioの同期を取りましょう。

映像を遅らせるより、AudioのDelayを調整した方が低コスト

vMixで映像を遅らせるのは高コストな処理となり、無用な負荷をPCに与える結果となります。 映像を遅らせるには、「⚙Input Settings 」→「Advanced」→「Delay」(フレーム単位で指定)を使用しますが、これが出来るのは「Camera」Input に限るという制限があります。 また、メモリも大量に必要なので、長いディレイを入れるとPCリソースをかなり消費するため注意が必要です。 通常はAudioのDelay調整で対処しましょう。

Visible in Mixer

Audio Mixer にフェーダーを表示するか否かを設定出来きるチェックボックスです。 Audioを使わないInputの場合はこのチェックを外す事で、フェーダーをオペレーターの目から隠す事が出来ます。

🎧アイコンとボリュームノブ

前述した、「ヘッドホン出力」への送りON/OFF切り替え、及び音量の調節が出来ます。

Pre, Post レベルメーター

Pre がソースそのもののレベルを表し、Postが全ての処理した後のレベルを表しています。 タブで選択したエフェクトのIN と OUT と誤解しがちですが、Audio Settingsで設定できるすべての処理の前と後です(全てのタブで共通のレベルメーターです)

Plugins

ここでは、PCにインストールされている 64bit版の VST3 プラグインを使用できます。 VST(Virtual Studio Technology) プラグインとは、Steinberg社が開発する有名な楽曲制作ソフト「Cubase」で使用されているプラグイン規格の事で、 仕様やSDK(*1) が公開されているので、Cubaseだけでなく、様々なオーディオ系・ビデオ系ソフトに採用されているものです。 無料・有料の物を問わず、数限りなくリリースされているので、ネットで検索すれば、ほしい効果の物はたいてい見つかると思います。 エフェクターだけでなく、シンセサイザーもVSTプラグインとしてリリースされています(*2)。

配信だと良く使われるのは、ボイスチェンジャーやノイズリダクション系ですかね。 出来れば、確認用にスペクトルアナライザーも入れておきたいですね。 また、vMixに標準でついてるEQやCompressor、Noise Gateが気に入らない場合は、VSTプラグインでお好みの物を使用するのがいいでしょう。

ただ、VSTにはいくつかバージョンが存在し、冒頭で書いた通り、vMixでは64bit版のVST3プラグインのみ対応しており、これ以外の VST プラグインは使用できないです。 これがなかなか曲者で、「超良いの見つけた!」とテンション上がっても、よく見たらVST3に対応してなかったりする事が多いです。 古いバージョンをVST3として使う、なんかいい方法ないですかね。

「+」ボタンでプラグインを追加、選択して「―」ボタンで削除できます。複数追加した場合、リストの上にあるものから順に適用されます。 プラグインの順序変更は、選択して「▲」「▼」ボタンで移動してください。プラグインのチェックボックスを外すとバイパス(プラグインをOFF)できます。 プラグインをダブルクリックすると(有るものは)GUI ウィンドウを開けます。このウィンドウはモードレスなので、開きっぱなしにできます。

下図は筆者が使用しているスペクトルアナライザーのGUIです。

VST プラグインは検索すれば本当にいくらでも出てきますが、参考としてこちら に無料で使えるプラグインを集めたリストがあります。


(*1) Software Development Kit。ソフト開発用ツールのこと。

(*2) 全く関係ないですが、VSTプラグインってアーティストに使ってもらう物の為かGUIがカッコイイものが多いですよね。vMixも見習ってほしいですね。

EQ

ごく簡易的な10バンドのグラフィックイコライザー(EQ)を使用することが出来ます。使用するにはまず「Enable EQ」にチェックを入れてください。

EQの調整で狙った効果を得るためには、経験とフラットなモニター環境が必要になると思います。 環境もなく安易に周波数帯を削ったり盛ったりしてしまうと、音痩せや音ごもり、音割れの原因になります。

なぜなら、イヤホンやヘッドホン、ホームユースのスピーカーは周波数特性が一定でなく、それ自体がイコライジングされている可能性が高い為、 モニターしながらEQを調整して「聴いた感じこれで良し」と思っても、他の視聴環境では想定した鳴り方をしてない場合が多いからです。従って、 どんな環境でもイイ感じに鳴るようにするというのは難易度が高いのです。

ここでは参考までに、筆者がどのように使っているかご紹介します。

ケースその1: 音割れ対策

超低音を含むソースは、聴いた感じ大丈夫そうでも容易にクリップ(音割れ)を起こします(*1)。 また、ソース環境が劣悪な場合、信号にバイアスが掛かっている可能性もあり、ダイナミックレンジが著しく狭くなってしまいます(*2)。

余計な低音成分(バイアスも、周波数が限りなく 0 に近い低音と見ることが出来ます)をイコライザーでカットすることで、ダイナミックレンジを確保します。


(*1) 低音はその振幅の大きさの割に、人間が音として認識しづらく、また、20Hz以下の超低音域を再生できる環境も限られるため、 スペクトルアナライザーで視覚化しない限り、超低音成分の存在すらも気付かない事が有ります。従って、信号に大きな超低音成分を含んでいると、 事実上その振幅分のダイナミックレンジが削られます。

(*2) (*1)と同様ですが、信号がプラス方向あるいはマイナス方向にオフセットしている場合、その分信号が振幅できる範囲が狭くなってしまいます。

ケースその2: ノイズ対策

マイク由来の「シー」というノイズが気になる場合は、高音域を減衰することでこれを軽減出来ます。例えば4k以上を減衰させることが多いです。 やりすぎると音質が悪い・こもった感じになってしまうので注意が必要です。

逆に、「風切りノイズ」は低音を多く含むので、62Hz 以下の低音域を減衰することで耳障りな風切り音を軽減することが出来ます。
こちらは、やりすぎると薄っぺらい音になってしまいます。

Compressor

ごく簡易的なコンプレッサー(以下、コンプ)になります。 「Threshold」以上の信号(振幅)を「Ratio」の比率で圧縮します。1:1 はコンプを掛けていない状態、2:1 は Threshold 以上の振幅を1/2に、 3:1 は 1/3 に・・・といった感じに動作します。コンプに良く有るAttackやReleaseは、こちらには有りません。

コンプには様々な効果がありますが、配信で重要なのは「音量の差が小さくなる」という点です。いわゆる、声量が安定していないMCに使用することで、 声が小さい時(ボソボソ喋りとか)と、大きい時(テンションMAX時とか)の差をある程度小さくする事が出来ます。

どのように設定したら良いかと言うと、まず、ダイナミックレンジを広くとるために、 「声が大きい時」にクリップ (*) しないようソースのボリュームを絞って調整します。 「声が小さい時」の立ち上がり部分が十分入るくらいの音量を「Threshold」として、出力を聞きながら音質が大きく破綻しない程度に「Ratio」を上げましょう。 最後に、コンプが掛かると音量が小さくなるので、その分「General」→「Gain」を調整して持ち上げてください。

もちろんデメリットもあり、抑揚が無くなり平坦になる、環境音・フロアノイズが増幅されて騒々しくなる、音が歪んで耳障りになる等が挙げられます。 うまくパラメータを調節してこれらのデメリットが表面化しない様にしましょう。

コンプでも対応できないようなMCには、前述のAGCを使用するか、または「ある程度一定の声量で喋る」ように指導してください (まずはボソボソ喋り等の「小さい方」を改善する方が楽でしょう)

「Ratio」が高い場合は、Threshold以上の振幅をカットする「リミッター」として作用します(ただし、vMixのコンプは∞:1に設定できません)


(*) 音量が大きすぎて、信号のレベルが100%に張り付いてしまう事。デジタル機器によっては「クリップノイズ」として耳障りなノイズを発する場合があるので、 絶対に避けましょう。音が歪むくらいならまだいいのですが、造りの良くないソフトウェアの場合はスピーカーを痛めそうな「ヂヂッ」というデジタルノイズを発する場合があります。

Noise Gate

ごく簡易的なノイズゲートです。 ノイズゲートでは、「Threshold」レベル以下の信号をカットします。ほとんどの場合フロアノイズ (*) を取り除く目的で使用します。

特に「無音」の時はフロアノイズが「良く聞こえてしまう」ので、ノイズゲートを使用してこれを取り除きます。 音が鳴っている時・MCが喋っている時は、フロアノイズが混ざっていても聴覚心理的に認識しづらいですが、気になるようなレベルだと、 取り除くのに他の手段(EQやノイズキャンセルプラグイン等)が必要です。

使い方としては、レベルメーターを見ながら、MCが喋っていない「無音時(=ノイズだけ鳴っている)」の最大値よりもちょっと上くらいのdBにThresholdを設定してください。 Thresholdが高すぎると、MCの声も削られてしまいますので注意してください。


(*) 周囲のガヤ音や電気的なノイズ、例えば無音時にシーやブーンと聞こえるノイズ、何か電波を受信しているようなブブブブ・ピリピリピリというノイズが挙げられます。

Channel Mixer

チャンネルごとの音量を調整できます。 1がL(左)、2がR(右)チャンネルに対応しています。 更に、ソースが3つ以上のチャンネルを持っている場合は、追加のフェーダーが表示されます。

ぶっちゃけ、ステレオのチャンネル毎に音量を調節しなければならない事態というのは、ソース側に問題を抱えている可能性があります・・・。

Channel Matrix

チャンネル毎に、各Outputのどのチャンネルに対応付けるか、という設定です。 デフォルトでは奇数チャンネルがLに、偶数チャンネルがRに割り当てられています。

注意としては、各Outputへの送りはここではON/OFF定できません。
何を言ってるかわからないかもですが、此処はあくまでも「チャンネルの対応付け」を設定します。 Outputへの送りはAudio Mixerの「M」「A」「B」ボタンでON/OFFしてください。

使い方としては、ステレオをモノラルにダウンミックスしたり、ステレオの左右を入れ替えたり、 パラで入力されたマルチチャンネルAudioを各Bus Outputに振り分けたりといった感じの使い方でです。

後述しますが、「Masterに送りつつヘッドホン出力のみで鳴らす」という事もChannel Matrixで実現します。

適用される順番は?

ここまで説明した所で、気になって夜も眠れない方もいると思うのが、「果たしてどの順番で適用されるのか?」という点です。

明確なドキュメントはないのですが、調べた限りでは

(Device Volume → ) Plugins → EQ → Compressor → Noise Gate → General → Channel Mixer → Channel Matrix

といった感じのようです。 尚、Channel Mixerは各チャンネルのフェーダー横にレベルメーターが付いてますが、この表示だけは一番先に処理されるみたいです(*)。 なぜそうなってるんだ・・・。


(*) つまり、エフェクトが掛かった結果がレベルメータに反映されていない。

OUTPUTS にもエフェクトが使えます

OUTPUTS(Master, Bus Output)にもPlugins, EQ, Compressor, Noise Gameを使用できます。 General の設定も使えますが、Delayは入れることが出来ません。

4. 複数のOutputを活用

vMixは、豊富なBus Outputを備えますが、ここでその活用方法を紹介したいと思います。

MC返し

A) Bus OutputでMC返しを作るケース

MCに返すAudioをBus Outputで作ることが出来ます。 Audio Outputs設定で、Bus AにMC返し出力用のAudioデバイスを割り当ててください。

ここで普通、MC返しからはMC自身の声は除外したいと思いますので、Bus AにはMC以外の全てのAudioをミックスするように Audio Mixer を操作してください。 MC自身の声以外にも、例えばBGMも除外したい場合は、BGMをBus Aに送らない様にするだけでOKです。

また、「トークバック (*)」のような配信に乗せたくないAudioはMasterに送らず、Bus Aのみに送るようにします。


(*) MCに指示を出すためのオペ室からの音声通話。「がなり」とも言う。

B) ヘッドホン出力でMC返しを作るケース

ところで、返しの音量に関してはBus Aのミックス全体で調節する形となりInput毎に個別変更はできません。厳密に言えば出来ますが、 例えばMCから「〇〇だけ聞こえにくいのでもっと音量を上げてくれ!」と言った要望に答えるには、Input自体の音量を調整するしかないです。 その場合は当然Masterのミックスも音量バランスが変わってしまいますので「してはいけない」と言うのが正しいです。

そこで、Bus Output はオペ室のモニター用として使用し、ヘッドホン出力をMC返しに使用する方が何かと都合がいいでしょう。 ヘッドホン出力はInput毎に送る音量を調整できますし、全体の音量も調節できます。

上記の場合、Audio Mixerは下図の様な設定となります。

トークバックはMC返しに乗せるのでMasterに送っていますが、当然、配信には乗せてはいけません。 そのため、下図の様に、Channel MatrixでMasterのチャンネル割り当てをOFFにしてください。 これでヘッドホン出力には送られていながら、配信には乗らなく出来ます。

※事故多発地帯です!トークバックが配信に乗らない様に必ず Channel Matrixの設定を確認し、テストも行ってください。

多チャンネル配信

ここでは、メインの日本語配信の他、同時に英語配信とクリーンフィード (*1) を送出する、というシナリオを考えます (*2)。 配信で「副音声」という考え方はまだ一般的でない (*3) ので、別の配信として送出します。 前提として、日本語音声も、英語音声もvMixにAudio Input として入ってきており、その他のAudioは、日本語配信も英語配信も同じものを使用する事とします。

Master を日本語配信用として、英語配信用を Bus A にミックスするように Audio Mixerを操作します。 また、Bus B には日本語音声も、英語音声も送らず、MC以外のAudioだけ乗る様にします。

この時、Bus AとBには、Audioデバイスを割り当てる必要はありません。 Audio Outputs 設定では Bus AとBに「Enabled」を選択すればそれぞれの Bus Outputを使用できます。

また、Streamは「1」を日本語配信、「2」を英語配信、「3」をクリーンフィードとします。
「Stream」の「⚙」を押して、「2」→「Quality」の「⚙」→「Audio」→「Channel」で「BusA」を選択します。
更に、「3」→「Quality」の「⚙」→「Audio」→「Channel」で「BusB」を選択します。

これで、英語配信は Bus A でミックスされる英語音声、クリーンフィードは Bus B でミックスされるMC無し音声を使用してエンコード&送出が行われるようになりました。


(*1) MCの音声が入っていない配信の事を「クリーンフィード」と言います。クリーンフィードを受け取った外部の配信者が、自分のMCを乗せてサイマル放送する、といった時に使用します。

(*2) 複数言語配信を一つの配信PCでオペレートするかよ、という問題はここでは置いておきます。

(*3) 複数音声を同時送出して、視聴者側で切り替えられたら面白いのにと常々思っています。

録画

Record で使用する Audio Output にも、Bus Output を指定できます。 「Record」の「⚙」を押して、「1」 or 「2」→使用するフォーマット(大抵はMP4)→「Audio」で、使用するBus Outputを選択してください。 Record は最大2つ同時に行え、それぞれで異なる Output を指定できます。

これによって、MC無しの録画を残して後々編集で使用する、使用条件が厳しいBGM等の録画に残せない素材を除外する、といった事が出来ます。

External Output

vMixでは最大4つの「External Output」を使用できます。External Outputではパソコンに搭載されたディスプレイ端子以外の出力先に絵音を送り出すことが出来ます。 例えば、

  • 仮想キャプチャデバイス(最大2つまで使用可能)
  • NDI (*1)
  • SRT (*2)
  • 外部レンダラー(Intensity Pro (*3) 等のHDMI OUT port)

と言った出力先が使用可能です。 External Outputの詳しい使い方は別の回で説明しますが、4つの出力先それぞれで使用する Audio Output に Bus Outputを個別指定可能です。

従って、別のスタジオで行う英語配信用に、クリーンフィードを NDI で送るという事もできます。


(*1) (*2) 後々の回で使い方を解説します。

(*3) 持ってないので解説できません・・・。

5. 本日はここまで

音声部分の分量が多くなってしまいましたので、今回は一旦ここで締めたいと思います。 告知していたショートカットについては、申し訳ないですがまた後の回に順延します。 次回のアップは、今回程時間がかからないと思いますので、少々お待ちください。

それではまた!

次回は → vMix ハンズオン【第3.5回】